あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。

 今日は「ヘンリー四世 第一部」を読む。
 これは、シェイクスピアの登場人物中最も有名な男、フォールスタッフが登場する作品だ。

 
 際立った肥満、酒飲み、女好き、とにかく洪水のように台詞を言い続ける。
 基本的に駄目人間だが、どこか憎めない。

 「小田島雄志シェイクスピア遊学」によると「(フォールスタッフの言葉は)そのいずれも、いい抜け、ごまかし、詭弁、自己弁護、恥知らずで厚顔の極みでありながら、どこか憎めないところがある。それは、人間ってしょせんこんなものさ、というリアリズム精神と、それでいいじゃあないか、という楽天的ユーモアに裏打ちされているからだろう」とある。
 「シェイクスピア作品ガイド37」によれば「道徳観からの解放」の痛快さを満喫させてくれる男」とある。
 
 こういう男が大人気、というところにイギリスという国がまた違った角度で見えてくる。
 心のそこでみんなもっと解放されたいと願っているのではないか。
 それをかなえてくれるのがこの男、フォールスタッフだ。
  
 これが序盤、遊んでばかりいる駄目王子とつるんで、うだうだやっている。
 このあたりたぶん、本国では大爆笑なのだろう。
 
 忠臣ノーサンバランドの息子ホットスパーが国王、に反旗を翻す。
 このホットスパーは、よくできた息子で、王は自分の息子と取り替えたいと思っているくらい。
 しかし、ちょっと直情的すぎでかえってユーモアが感じられる。
 反乱軍を起こそうというとき、夫が何をしているのか知らない妻が「ぜひ聞かせてください、私を愛してくださるならば」と問う。
 このあたりのくだりは「ジュリアス・シーザー」のシーザー暗殺を企てるブルータスに問うポーシャの台詞にそっくり。
 しかし、この夫は「なんであわただしく、おでかけになるのです?」という夫人にたいし「馬で出かけるのだ」とにべもない。
 ブルータスとポーシャのやりとりのパロディのようだ。


 前半、結構ユーモアあふれているのに後半戦乱の場面になると突然まじめになる。
 ホットスパーも敗れて殺され、彼についた貴族も死刑になり、結構悲惨。

 駄目王子ハルは実は駄目な姿は仮の姿、本心は違う。
 王者としての堂々たる真の姿を現す機会をねらっている。
 戦争になると父親を救い、大活躍。
 
 しかし、小田島先生も書いているようにハル王子は不真面目なフォールスタッフと絡んでいるほうが生き生きと見える。
 戦争の中により生々しい人間が見えてくる「史劇」だ。

 
 今日は近所の神社に初詣に行く。
 小さい神社だが、長い行列ができていた。
 今年もみんな健康でありますよう。
 良いお年を。