大人の手

 「のんちゃんのり弁」という映画を観る。
 31歳で夫と別れ、子供を連れて一人立ちすべくがんばる女性の物語だ。
 彼女は資格もなく、就職活動に非常に苦労する。
 ただひとつの取り得は、お弁当作り。
 その特技が知れ渡り、やがて、お弁当屋を開くことを決意する。


 私には夫も子供もいないが、身につまされるところが多かった。
 特に就職活動に奔走する場面など、私にも覚えがありよく分った。
 資格も特技もないと本当に大変なのだ。
 面接官に嫌味を言われたりする。
 スナックで働こうとするが、うまくいかない。
 
 主人公はお弁当を作ることで、自分の生き方を見つける。
 彼女に料理を教える、料理屋の主人は言う。
 「あなたはまだ子供の手だ。大人の手を持ちなさい」
 「大人の手」ってなんだ?
 と私は自分の手をじっと見た。
 私の手もまだ子供の手に違いない。
 大人の手にしたい、と心から思った。