あの頃のままで

 先日、とあるきっかけで恩師に会った。
 私が以前、行っていた演劇の養成所の先生だ。
 ほんの立ち話程度しか会話ができなかったが緊張した。


 その場で、お会いできることが分っていたので前から、すごく緊張した。
 何しろ、ものすごくお世話になった。
 私は今でもあんまり変わらないかもしれないが、舞台に上がると(上がらなくても?)人間らしい動きができない。
 緊張して変な妖怪みたいになってしまうのだ。


 そんな私に、忍耐強くつきあってくださった方だ。
 お世話になったなどという言葉だけでは言い尽くせない。
 もう、数年ぶりになるので、やはりあの頃より成長した自分とお会いしたい、とか考えてしまう。
 一体、自分は何を成しただろうか?
 多少なりとも痩せただろうか? 
 などとお会いする前からいろいろなことを考えて体が震えてしまった。
 成せなかったことなど余計なマイナス要素ばかり頭に思い浮かんでしまう。
 それでも、今の自分で会うしかないのだ。

 
 ご挨拶できたのはほんの数分だったが、まるで昔のままだった。
 かけてくださる言葉も接し方も、本当に変わらない。
 一番、お世話になり、良い関係であった時期から寸分違わず一緒だったと言っていい。
 まるで、お会いできなかった時期にもどこかで見てくださったかのような錯覚を覚えた。
 今度、お会いできるその日までに誠実に、少しでも成長できるよう生きていきたいと心から思った。