思いわずらうことなく愉しく生きよ

思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)

思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)

 江國香織さんが三姉妹の小説を書く。
 自主公演「アンダンテ」も三姉妹の物語だ。
 ライバルだ。
 これは、読まなければ。

 しかし、この姉妹そろいもそろってなんだか変だ。
 ちょっと最初のほうはその感覚についていけない気がした。


 特に男性関係はおかしい。
 長女麻子は深刻な夫の暴力に悩まされている。
 水を欲しいといったのになかなか注いでくれなかったとか、そんな理由で暴力をふるわれる。
 しかし、夫とは離れられない。
 

 次女の治子は、有能なキャリア・ウーマン。
 無名で稼ぎも少ないライターと同棲している。
 でも、他の男と関係を持ったりする。
 もう、明らかに彼のことを馬鹿にしているとしか思えない。


 三女の育子は、軽やかに様々な男と関係を持ってしまう。
 自分を西部劇に出てくる娼婦のようだと感じている。

 
 正直、自分は誰とも似ていない、誰にも共感できない、と感じた。
 しかし、長女麻子が夫から逃げてくる、そんな彼女を他の二人がなんとか助けようとする件から俄然面白くなる。
 性格も容姿も全然違う三人だが、それでも姉妹だからどこかでつながっている、と感じられる瞬間がいい。


 それにしても、麻子が夫に暴力をふるわれる描写、また、離れられない心境がリアルで恐ろしい。
 麻子は言う。
 「彼に私がではなくて、私に彼が必要なの」
 恐ろしい。ホラーを読んでいるようだった。

 
 こんなに共感できないと思ったのに、しかし、息もつかせぬ間に読んでしまった。


 さて、この小説が「アンダンテ」にどう影響するかはお楽しみに。