華々しい登場
ついについに出番がきた。
やったあ!!!
今回の稽古は自分たちで、どうやって動きたいかなどなど考える。
みんな、意見を出し合い、演出の彩乃木さんが整理していい形で稽古が進んでいる。
だが、いまいち私はその波に乗りきれずにいる。
自信を持って意見が言えず、ううんと頭を抱えるばかり。
私は頭が固い。
冗談で出したとしか思えない、え?それ、あり?と驚くような意見が案外通ったりする。
ぽかんとして見ているばかりだ。
こんなことで秋の公演の演出ができるのだろうか。
そうそう、出番が来たのだ。
しかも考えていなかったところで出られることになった。
やったあ!
絶対、やっぱりなしと言われないようにがんばるぞ!!!
しかし、あらためて、見ている側と舞台に立つ側の違いを思い知らされる。
姉さんが「ビデオを観てこんなことを言われていたんだと気がついた。実際は全然聞こえていなかったことが分かった」と言っていたが、まさにそのとおり。
方向音痴になり、どこに行っていいのかも分からなくなり何を言われても聞こえない。
彩乃木先生は新人公演の稽古が始まった時からひたすら「聞け」「見ろ」と言われている。
これほど難しいことはない。
普段ならできている、当たり前のことが舞台に立つとできなくなる。
しかし、「できると思っている」こそ傲慢なことだ。
落ち着け、私。
「オセロー」における今回の役は娼婦ビアンカだ。
色男の副官マイクル・キャシオーを本気で愛してしまう。
キャシオー役はキュートな岩崎君。
自分の身長を伸ばすことが人生の命題らしい。
男も俳優も身長ではなくハートだと思うのだが、いかがでしょうか。
でも、私も体重を減らしたいしなあ・・・
助け合って、本番を迎えましょう。
ところで、前に入っていた研究所の人に会うと「普通になったの?」と聞かれる。
私は普段からも挙動不審で、絶えずきょろきょろしているので、さらにプレッシャーのかかる舞台の上では自然に動けない。
自分に対する自信のなさと、人にどう思われるかばかり気にする自意識が私の挙動をおかしくさせる。
普通の人になりたい!
稀有なことを考えない。
ひたすら、普通に舞台にいることを考えたい。
でも、何も考えないのとは違うんだよなあ。
悩みはつきない。