日本で通じない日本語

 アルバイト先に「オセロー」の宣伝に行く。
 バイト仲間から面白い言葉を聞く。
「店長に日本語が通じなかった」
 なんでも、「その日は前の日が遅いので、6時や6時30分に入るのは(朝が早いのが)つらい。時間を変えてほしい」という希望を出したところ7時インにされた、ということだ。
「30分しか違わないじゃん」
 と怒りまくり。

 なんか「日本語が通じない」という表現が面白いなあと思った。
 イギリスに行ったときは「ああ、英語が分かればどんなに世界が広がるだろう」と感じた瞬間が千回くらいあった。
 しかし、本当の意味で日本で私の話す日本語が果たして通じているのだろうか?


 むしろ、イギリスの店で親切な店員さんが、英語の分からない私に一生懸命語りかけてくれていた時のほうがお互いに通じ合っていたかもしれない。
 かつて「英語狂言」というのを観たことがある。
 なんと、英語が分からないのに、日本語の狂言を観たときよりずっと面白かったのだ。
 観る人が英語も話も分からないことを前提で上演されていたので、実に分かりやすくていねいに作られていたからだと思う。
 なにより、出演者の「伝えよう」という気迫が感じられた。

 
 「オセロー」はもちろん日本語で上演する。
 ちゃんと話す言葉が分かるよう演じたい。