イギリスは本当においしいのか?
前回のあの長い長いイギリス旅行の話、本当は何日かに分けて少しづつ書くつもりだったが、やむ得ない事情によりああいう形になってしまった。
こんな読みにくそうなのを誰が読んでくれるだろうと思ったが、がんばって読んでくださった方の感想を幾人かからいただけたので、忘れないうちにもう少しイギリスの話・・・
あんまり遊んでいる場合ではないのだが・・・
早く頭の中を日本に戻さないと・・・
しかし、芝居のほかに私の旅のもうひとつの目的は英国美形男性の探求・・・じゃなくて、イギリス食文化(いやそんな大げさではなく)の探求であった。
それについては是非とも触れねばならない。
イギリスの待ち歩きガイド「ハッピーロンドン」という本によると「イギリスでいちばんおいしいのは朝食」とある。
そのとおり、ストラッドフォードで泊まったTHISTER STRADFORD UPON AVON (ホテル)の朝食はすごかった。
今回のツアーでは朝食のみ組み込まれていた。
「イングリッシュブレックファースト、プリーズ」
と言うと、目玉焼き(焼きかたは選べる)2個、ソーセージ、ハッシュドポテト、大き目のベーコン2枚、焼きトマト、豆を煮たもの、しいたけがひとつの皿に乗ってどんと出てくる。
さらに、数種類のチーズ、豊富なフルーツ、ヨーグルト、デニッシュや菓子パンがバイキング形式でとり放題。
シリアルも豊富な種類が並んでいてこれもとり放題。
もちろんたっぷりのミルク。
オレンジジュース、アップルジュースなど数種類のジュースがこれも好きなだけ飲める。
さらにトーストがついてきて、紙のように薄いぺらぺらのトーストが一人分でなんと9枚もある。
まず食べきれない。
バター、ジャムは幾種類もテーブルの上に乗っている。
もちろんコーヒーか紅茶が出てくる。
イギリスの紅茶はうわさどおりおいしい。
夢の続きを見ているかと思った。
「イギリスはおいしい」(林望 著)によると、「紙のように薄くパンを切れる」のがイギリス人の自慢だと言う。
著書によると日本人はパンは主食だという概念があるから厚めの食パンが主流だ。
しかし、イギリスには主食、副食という概念がそもそもない。
ジャムやマーマレードなどそのままだとべたべたして食べにくい、
チーズもそのままだと風味が強すぎる。
そこであ、パンではさまなきゃ・・・という目的で食パンがあるから、そのために薄く切ってあるということだが・・・
しかし、これは・・・あまり・・・ううん・・・どうでしょう。味的には・・・
しかし、おそらく日本だとここに豊富な野菜が出てくるだろうなというところでレタスなどの緑の新鮮な野菜がない。
肉と野菜をバランスよくとる、という教育を受けてきた者にとっては少々不安になってくる献立ではある。
しかし、間違いなくおいしく朝からこってりと贅沢だ。
ツアーで一緒のご婦人も「やっっぱり朝からしっかり食べると、その日一日の調子がまったく違うわ」と満足されていた。
朝にこれだけしっかり食べると元気が出てきて、エネルギッシュに過ごせる。
よし、私も日本に帰ってもがんばろう・・・と思ったがやはりぎりぎりに起きて何でもいいから口に入れられればいいという日々だ・・・
ところが、その後移動したロンドンのホテルは・・・
シリアル、牛乳、ヨーグルト、フルーツ・・・以上。
というメニュー。
もちろんバイキング方式だが・・・
これは日本で言うと・・・ご飯と味噌汁・・・以上。
という感じではないか。
いや、普段そんなに贅沢な朝食はとってないのでこれでも十分贅沢なのだが・・・
豪華な朝食を体験した後だったので少し寂しかった。
さて、さて、朝ごはんは何の心配もいらないが昼食と夕食は自分で調達しなければならない。
これが・・・私のみならずツアーの人全員が苦労したところだった。
レストランはもちろんあるが、押しなべて高級そうな空気を醸し出しているのだ。
皿にナイフ、フォークというテーブルセットができていて・・・
いかにもウエイター・・・という感じの人が接客をする。
慣れないチップについても考えなければならない。
しかも、1ポンドが240円(だいたい)だ。
だいたい普通に10ポンドなどと書いてあり・・・2400円か・・・これは相当な贅沢だ。
もちろんマクドナルドはあるが・・・さすがに毎日は・・・
イギリスでは外食するということは本当に贅沢なことのようだ。
最初の日はサンドイッチとパンを買ってホテルで食べるということで昼食をすます。
サンドイッチはしかし、緑の新鮮な野菜がはさんである感じではない。
チキンと野菜のサンド(ダイエットサンド400カロリー)を買ったがなんとなく濁った緑。
全体的に見た目あまりおいしそうではないが、割とおいしかった。
ちょっと遊びで菓子パンを買う。
全体的にパンは1ポンドもしないものも結構あり、お手ごろだった。
ドーナツパンにピンクのチョコレートがのっており、生クリームがこれでもかというくらい入っている。
なにがダイエットサンドだ、なんの意味もない。
これが・・・おいしかったんですよ。
生クリームが新鮮で、みずみずしく口の中に入ってくる。
イギリスにいると太りそうだ・・・
スーパーでお相撲さん級のサイズの服も普通に売っていたが、間違いなくお世話になりそうだと思った。
夕食はマクドナルドの子供セットですます。
ハンバーガーと小ポテト。
これで1・9ポンド。(456円くらい)
参加者の中にはホテルの部屋にサービスでおいてあるショートブレッド(赤い包装紙の長方形のクッキー、日本でも輸入食品の店には必ずある)と朝食時においてあったリンゴ(たぶん飾り)ですませる人もいた。
これなら安かろうと屋台のホットドッグを買ったときはまいった。
値段が書いてなかったので聞くと3.5ポンドと言われる。
840円だ。
しかも、どうしても「マスタードとケチャップをつけてください」が英語で言えない。
プレーンの味気ない、高価なホットドッグを一人川を見ながらかじる羽目になった。
さて、イギリスといえばあこがれのフィッシュ・アンド・チップスだ。
イギリス人にとってもっとも親しみのある町の至るところにある食べ物らしい。
「イギリスはおいしい」によるとイギリス人にとって「マクドナルドよりさらに下等の扱い」の食べ物だという。
魚の種類はタラもしくはカレイ。
これが揚げてあり、フライドポテトがついてくる。
本来なら屋台で新聞紙に包んであるもの(基本立って食べる)だというが、私が食べたのはちゃんと皿に乗っているものだった。
まず、最初に食べたのは観光客用のファーストフード店。
でかでかとしたフライされた魚とフライドポテトが皿からはみ出そうになっている。
もちろん野菜はない。
コレステロールを気にしながらケチャップをつけて食べる。
ああ、魚を揚げてフライドポテトがついているんだ・・・
という味。
最後まで食べられなかった。
もう一軒目は、ツアーのみなさんで行きましょうという企画で夕方に行った割とちゃんとしたレストラン。
ああ、魚を揚げて・・・(以下略)という味。
いいレストランなので豆もついてました。
これで紅茶をつけてだいたい10ポンド(2400円)
ううん・・・
ロンドンでホテルの近くに1ポンドで長いフランスパンに卵とベーコンがはさんであるサンドイッチの売っている店を見つける。
店のおじさんは私が英語をしゃべれないと分かるととてもていねいに対応してくれた。
「(お金を渡しながら)さ、1、2、3、4・・・これがおつりだからね。もう一枚お手拭をあげよう。ちゃんと手をふいて食べるんだよ」
などということをもちろん英語で言われて、紙ナプキンをたくさんもらった。
たぶん子供だと思われたのだろう。
その店でやはり1ポンドのイチゴのショートケーキを買う。
食物探求には欠かせないのだ。
しかし・・・それは・・・
ちゃんと生クリームとイチゴがのっている。
しかし、得たいの知れない砂糖のかたまりのようなものがところどころに入っている。
生地もぱさぱさ。
イギリスではケーキ屋さんをほとんど見かけなかった。
なんかやたら高級そうな入りにくそうな喫茶店にケーキが並んでいたが・・・
食べたかったけど・・・
イギリスにいて、だんだん自分に手に入れられるのはサンドイッチのようなものばかりだと分かってきた。
そうすると「食べること」自体に徐々に興味を失ってきた。
それよりも楽しいことはたくさんある。
町並みのひとつひとつが珍しい。
テレビをつけても英語ばかり。
雑誌も英語。
毎晩、夜には芝居が待っている。
そう思うと、別に食べなくていいや、という気分になってきた。
とにかく、朝ごはんを真剣につめこんで後は適当にする。
ある意味健康的な生活を送れたのかもしれない。
しかし、食文化の探求においては実に中途半端なものになってしまった。