コリオレイナス、才能って・・・
先日、「コリオレイナス」を観る。
作者は敬愛のシェイクスピア先生。
演出は、あの世界の蜷川幸雄さん。
主役のコリオレイナスには、唐沢寿明さん、ライバル役には勝村正信さん。
セクシーで美しい男たちを真ん中に据えて女性の心をつかんでいる。
二人のフアンとおぼしき女人方がたくさん観に来ていた。
そして、吉田鋼太郎さん、幸寿たつきさん、嵯川哲朗さんら脇を固める。
しかし、なんといってももう一人の主役といっていいほどの役を演じたのがコリオレイナスの母役の白石加代子さん。
その存在感は圧倒的。
出番はピンポイントながらも、強烈な印象を与えていた。
勇猛な武将、コリオレイナスも、その他のどんな男たちが何人束になってもかなわない。
コリオレイナスは、命にかかった重要な決断を、この母の言葉によって決めてしまう。
「コリオレイナス」が上演できるか否かはこの役ができる人がいるかにかかっているのではないだろうか。
そう、思わせるのに、十分な存在感だった。
古代ローマ。紀元前五世紀!
「ジュリアス・シーザー」よりももっと前。
ちなみに「ジュリアス・シーザー」は紀元前44年です。
「ジュリアス・シーザー」よりも素朴で荒々しい!
でも、ちょっとパンフレットのローマ史年表、簡略化しすぎじゃないですか?
もちろん、もう一人の主役は市民たちです。
市民の一人一人を「その他」扱いにせずに、大事にしている印象を受けました。
幕開き、まず大きな鏡が出てきて観客席全部が映し出され、度肝を抜かれる。
そして、大きな大階段が出現。
主にここで演技が行われる。
殺陣のシーン(日本刀や槍使用)も階段だったので・・・正直、ちょっと、やりにくそう・・・
衣装も護民官が僧侶を思わせる服だったり、全て日本を意識したイメージ。
すごく良かったです。
「なんか、よく分からないところも多かったけど、すごかったね」
「うん。良かった、良かった」
という声が終わったあと、あちらこちらから聞こえてきた。
これだけのセット、衣装、そして、俳優陣。
でも、何かシェイクスピアって難しいな、台詞長いな、と思わせてしまうものが、まだある。
ところで、別の芝居の稽古場の話で、雑誌に蜷川さんの記事が載っていた。
ちょっと引用する。
「「ラクだなあ!楽しいよ」
休憩が入った瞬間、演出家はうれしそうにいった。
(中略)
「(松たか子さんについてほめる言葉が続き・・・)才能って怖いね。もうスタート地点から違うんだから。
おかげで、稽古は、プロどうしの高級なやり取りを楽しむ毎日だよ」
この記事を読んだ途端、私は嫉妬と悔しさに体が震えるほどわなないた。
自分と演出家の関係との、このあまりの違い!!
悔しい、私も演出家をラクだとか言わせてみたい!!!
才能って怖いよね、とか言わせてみたい!!!
プロ同士の高級なやりとり!したい!!
ああ、才能ってなんだよ!
うおおおお!