「合唱ができるまで」
「合唱ができるまで」という映画を観る。
びっくりした。
本当に「合唱ができるまで」の話だった。
ところはパリのアマチュア合唱団の稽古場。
教会でのミサ・コンサートの本番に向けての稽古が始まる。
何の説明もなく、ナレーションも入らず延々稽古場の風景がうつしだされる。
日本のドキュメンタリーのように、誰かを中心に描くとかいうのもなし。
とにかく、本当に時には厳しく、時にはだらだらとした練習風景が続くのみ。
最初は本当にどうしようかと思った。
こんなの観て楽しいのだろうか・・・
しかし、まず指揮者のクレール・マルシャン先生という女性の指導力に引き込まれる。
年代もばらばら。100人くらいいる。
全員がやる気満々というわけにはいかない。
最初は、ついていけないのか歌っていない大人、集中力がすぐになくなる子供もいる。
能力もばらばら。
大丈夫?と思うようなへろへろした声、不協和音・・・
先生はお手本を歌い(上手すぎ)、時には楽譜なしで、徐々にみごとに合唱を作り上げていく。
年齢別に分かれて少人数でパート練習。
「あれ?このパートは一人しか来てないの?」
なんてこともある。
へろへろのテナー(男性パートの高い声の方)
自信なさげな歌声。
それが数分の練習で、時に、奇跡のようなみごとなハーモニーを作り出す。
他の先生の指導力も素晴らしい。
みごとにふらふらしている子供や、大人たちをひきつけていく。
「こういう曲を歌う時の問題点はわれわれの生活と歌詞がかけはなれていること。
でも、想像力で補わなければ」
芝居も一緒ですね。
小さい子たちに先生が言う。
「もっと楽しそうに歌って」
子供が答える。
「楽しくなくても?」
ううん。リアル。
「復習していないのね」
と怒られていたり・・・
発声方法もユニーク。
音楽の時間によくやった、音階を順番に歌うのはやらないんですね。(カットされていたのかもしれないが)
手を使ってハミングしたり、なんだか楽しそうな発声練習ばかりだった。
顔を手を使ってマッサージしている姿なんかもアップで映し出される。
演奏のオーケストラも素人で、その人たちも教えなければいけない。
本当に大変そうだった。
本番が近づくにつれ、時間との戦いにあせる指導者。
それでも、やっぱり本番の歌声は素晴らしい。
と思ったら、テロップが流れて本番の様子は短い一曲だけで唐突に映画が終わってしまった。
本当に「合唱ができるまで」だ。
こんな合唱団に入りたい!
こんな風に合唱に出会いたかったと、切に思った。