「ハミングライフ」・・・夢への一歩


 今日は「ハミングライフ」という映画を観てきた。
 新宿のある映画館で21時20分の回のみ上映されていた。

 とはいえ、主演は「Can Cam」のモデルの西山茉希さん、ミュージカル界のプリンス井上芳雄さん。
 ある層にとっては、相当魅かれるキャスティングだと思う。
 前にも書いたが、私は「エリザベート」という舞台で井上さんの皇太子を観たが、そのとき「王子様というのは実在するのだ」と思った。
 それほど品のある演技、そして、この世のしがらみを超越した透明感ある歌声だった。

 
 さて、「ハミングライフ」という映画。
 服飾デザイナーになるべく上京してきた藍。
 面接には次々と落とされ、気落ちしているところに雑貨店のアルバイトを見つける。
 仕事が楽しくなっていく反面、本当にやりたいことを見失っていく日々。
 あるとき、仕事場の近くの公園の木のうろに隠された絵を見つける。
 夜間の託児所で働いている青年が描いたものだった。
 互いの顔も素性も知らないまま二人の文通?がはじまる。
 夢にはつきものの挫折、迷い、落胆・・・
 しかし、青年の手紙、そして、彼の創作する絵と物語(割と哲学的)が藍を励まし、勇気づける。
 そんな日々が終わろうとしていたとき、藍は確実に夢に向かっての確実な一歩を踏み出せていることに気づく。

 
 もう、純度100パーセントの爽やかなストーリーだった。
 観終わった後、清清しい気分になれること間違いなし。
 夢に迷い、道に迷った若人にはぴったりの作品。
 作り手の心の温かさが感じられる。


 ただ、こんな夜にしか上映されていないというのはもったいない。
 他に上映している映画館はあるのだろうか?
 私が中学生とか高校生くらいの時に観たら、もっと夢中になれただろう。
 青春小説に夢中になれる年代なら、絶対何回も観るくらいはまるだろう。
 だが、どろどろとした現実を知ってしまった今は・・・
 多少、物足りないような・・・
 藍の服飾デザイナーとしての第一歩として作ったスカートは、白い生地が薄すぎて太ももまで透けている、とか余計なことを考えてしまった。
 
 
 パンフレットに載っていた監督の窪田崇さんの言葉が良かった。
「大きな夢や大きな目標を描くばかりに、逆に身動きが出来なくなる人が多い様に思う。
 まずはほんの少しの先を見据え、行動してみる事。その小川の流れが、やがて大きな海に出ることを僕は信じて止まない。
 この映画を観て頂いた方が、少し何かをしてみようと思うなら、これほど嬉しい事はないのです」


    
 しかし、パンフレットにプロデューサーの村田亮さんが書かれた「撮影日記」が爆笑ものだった。
 予算が足りなくなった部分は全て、監督のギャラから削る。
 納得のいかない、理解しがたい事柄、出来事は全て「大人の事情」という一言で語りつくされる。
 撮影途中、スタッフの人が行った「健康ランド」で、マッサージ時、全員が「精神」に効くオイルを選びマッサージ師に「どんだけ精神を病んでいる人達なんだ!」と笑われる。

 
 何かを「創る」という作業は、実に実に大変なことなのです。
 涙・・・