浴衣美人と「リチャード三世」
先日、子供のためのシェイクスピアカンパニー「リチャード三世」を観にいった。
実は数日前から、ASCの先輩野口さんと「浴衣で行こう」と約束していた。
はっきり言って私は着物姿には自信がある。
絶対に洋服より似合う。
体型が寸胴で、目が細く頬がぽっちゃりしているので、昔だったらもてもてだったと思う。
ま、今でも、もてなくはないけどさ。
日本舞踊を週に一度習っているので、浴衣を着るのにさほど困ることはない。
しかし、行く前は思ったよりプレッシャーを感じた。
自意識過剰なのだろうか?
前日に浴衣グッズをチェックする。
洋服ならしなくていい行為だ。
途中で着崩れたらどうしよう、その着方は変だと言われたらどうしよう・・・
浴衣を着ると決めてから、そんなことが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
当日、アルバイト中にものすごい雨が降り出した。
停電まで起こった。
窓から外を見ると、雨が吹いている。(降っているのではない)傘など役に立たない。
それを見た瞬間、「あ、今日は浴衣を着なくていいかも」と少し安堵を感じた。
しかし、無常にも雨はすぐやむ。
でも、この天候だし・・・
野口さんに電話。
「え、雨?こっちは降ってませんよ。関係ないです。浴衣、楽しみにしてますねえ」
あああ・・・
これは着なくてはならない。
もたもたと浴衣を着る。
これを着て外に出るのだというプレッシャーで、いつものようにいかない。
二度、三度やり直す。
そんなこんなで一人でごたごたやり、ようやく劇場に着く。
みんなが自分に注目しているような気がする。
明らかに気のせいだったが・・・
野口さんの浴衣姿はとても素敵だった。
赤がよく似合っていて、福袋で買ったとは思えない。
私はどうなのかしら、心ひそかにおろおろする。
やがて、幕が開き、芝居が始まる。
「リチャード三世」は戯曲で読んだ時、薔薇戦争の知識などほとんどないのにおもしろいと思った作品だ。
身体的コンプレックスを持ちながらも悪の限りを尽くし、王になる主人公の生き様は痛快だ。
今回はリチャードの左手が人形になり、彼の悪の部分を請け負っている。
そのアイデアがとてもおもしろかった。
人間にはもう一人の自分がいて、会話している。
それを人形がやっているのが分かりやすくて良かった。
出演者10人がテーブルを動かして場面転換をし、衣装を変えてさまざまな役をやり、スピーディーにひとつの舞台を作り上げていく様に興奮した。
彩乃木先生(ヘンリー六世とバッキンガム公を熱演!)に挨拶に行き、飲み会に行く。
浴衣を着たせいか日常、お芝居を観にいくときより、三倍くらい緊張して、興奮し、疲れた気がする。
ただ、思ったより周囲の反応も普通だった。
たいした事件も起こらなかった。
なんかちょっとがっかり・・・
鼻緒が切れたのをなおしてくれる人にも会わなかったし・・・
翌日「昨日はおとなしかったね」と言われる。
自分ではあまり意識していなかったが・・・
そんなにいつも傍若無人に大暴れしているのか?
私を、おとなしくさせておくのは浴衣を着せるのがいいかもしれないです。