晴れの日の別れ話

 まだ終わってなかったのかと思われるかもしれないが、とにかく今日、再び彼氏と話をした。
 
 初めて彼の不満を聞けた気がする。

 
 金曜日のメールに対しての不当、彩乃木氏が「自分とつきあったら女優になれない」と言ったことに対する不当、私がASCに洗脳されている、ブログに対する不当等々・・・

 金曜日の件に関して、「メールだけだと文章が間抜けに見えるのは仕方がないじゃないか」
 と言われ、なるほどと思う。
 メールというのはもっとも気持ちが伝わりにくい手段だと思う。
 確かにそれだけで判断して、彼女が緊急事態になっても来ない馬鹿な男だ、とか考えるのは不当なことだったと反省する。
 何よりも彼は本番中だった。
 余裕のない状態で、平常な判断ができなくても仕方がないだろう。
 異論があることは百も承知で書いてます。
    
 「じゃあ、俺とつきあうのをやめたら女優になれるのか」
 と言われ、答えられなかった。
 う・・・それは・・・
 私には、あまりにも女優になれなさそうな要素が多い。
 年齢的にも、肉体的にも、容姿的にも・・・
 しかし、彩乃木先生はちょっとでもなれる要素があると思うから劇団に入れてくれたと信じている。
 その、先生が「彼とつきあうのはやめろ」
 と言っているのだ。
 私としては少しでも女優になれない要素を減らしたい。
 そう言えるのは「本当に彼を愛していないからだ」と言われたら、「そうだ」と答えるしかない。
 
 ASCに洗脳か・・・
 確かに私は洗脳されやすい。
 あやしげな商品いっぱい買ってるし、占い大好きだし・・・
 しかし、洗脳という言葉は嫌だが、どこかの組織に所属するということはある程度そこの考えに沿うのは必要なことではないか。
 
 ブログや、ASC内で勝手に自分のことをいろいろ言われるのは、欠席裁判のようであまりにも不当だと言われる。
 確かに、彼のことをよく知らないのに、私を通してのみで彼を判断するのはどうか。
 ついに、この前のブログでコメントをくれたが。
 それを見る限り、案外素直に書かれたことを受け止めてくれたように思うが・・・
  
 
 互いの考えを交換した後、
 彼は「友達からやりなおしたい」
 と言う。
 友達・・・
 その言葉の曖昧性に少々悩む。
 どちらかが「好き」という感情がある限り友情は成立しないのでは?
「互いの公演に行ったり、手伝ったり(ASCの公演を手伝ってくれるよ)メールを交換したり、たまには一緒に映画を観にいったりするのならいいんじゃないか」
 と、彼は言う。 
「うん。それなら」
 ここで、友達協定合意。



 次の瞬間から、場所を移して、さっきの重々しい雰囲気は払拭。
 さっそく一緒にご飯を食べてとりとめのない会話。
 本当に話していても楽だし、趣味も合うし、好きな食べ物も似てるし、なんか・・・
 私の彼への気持ちがはっきりしない限り、普通に友達で良かったのではないか。
 そうしたらこんなことにもならなかったし・・・
 あせっていたのかなあ。

 ちょっとだけ友達らしくないことを聞く。
「経済的なことは抜きにして、私の子供だったら欲しいと思う?」
 彩乃木さんに「愛」とは「相手の遺伝子が欲しいと思うことだ」と言われたのが、心に残っていたのだ。
 彼は少し考えて言う。
「うん。ローズ(私のことだ)ならいいかなと思う」
 
 不覚ながら少々感動した。
 私はなぜこの人をそこまで愛せないのか。
 もしかして、難しいことを考えず何もかも捨てて、女優になることもやめて、この人の腕に飛び込むことができたらそれはそれで幸せなのか?

「でも、ローズが女優になるところも見たいんだよね」
 彼は言う。
 それが、両立しないことだとお互い考えているあたり、私たちの男と女としての関係は終わった。
 
 しめやかにご飯を食べて、いよいよお別れ。
 互いの部屋の鍵を返す。
「僕はいつまでも、ローズを思っているから」
 そう言う彼に対し、
「他の女性を探して」
 と私。
 彼はしかし、そのまま去っていった。

 
 互いに嫌なわだかまりを残したまま、別れなくて良かった。
 良かったけど・・・
 しばらく寂しいなあ。


 「ジュリエット」になるため女優修行に専念します。