ネット社会の弊害、もしくは一人相撲
先日、彼と話し合った。
例のブログ問題についてである。(私が彼のことをブログに書き、それを見た彼が激怒したというもの)
ちなみに、私の書き方が悪かったので誤解されている方も多いようだが、彼が私のブログを見てからは「全てメールのやりとり」で連絡が行われていた。
「ユング云々」についても、メールで言われたことである。
このことが、今回の話の非常に重要なポイントとなるのである。
どれほど、怒っているのだろう。ユング心理学を用いて、なんと恐ろしいことを言われるのだろう。
彼は少なくとも今まで私に対して、怒りを見せたことはなかった。
もう、これで終わるのならそれまでの運命だ。
話し合いの当日、私は指定時間より前にファミレスに来て、景気づけにチョコレートパフェを食べながらそのときを待った。
心の中は暴風雨である。
私は、それまでの彼との日々を思い浮かべながら涙さえ流さんばかりだった。
チョコレートパフェは思いのほか量が多くて食べきれない。
やがて、指定の時間になって彼が来た。
予想に反して、彼の周囲にはそよ風でも吹いているかのごとくさわやかだ。
私を見る瞳も以前までのように愛情に満ち溢れている。
え?!
私は、試しに2、3世間話を振ってみる。
受け答えも、前とは変わっていない。
あれ?!
しかし、このまま世間話をしていたのでは、何のためにこの席を設けたのか分からない。
私は恐る恐るブログ問題について切り出した。
「ああ、あれ? え?怒ってないよ」
は?あのメールは何?
「怒ってると思ってたの? そういや、最近やたら悲観的な文面のメールが来るから何事かと思っていたよ。ははは」
はははじゃねえ。
私がここ数日どれほど、気をもんできたことが。
メールの文面が、「ブログに書かれた2、3のこと(自分の将来のこと、部屋の掃除についての書かれたことに対する自分の見解)について言いたいことがある」となっていた。
また「あえて伝えていなかったことも言う」、「ユング心理学の対症療法を用いて深層心理を云々」
等、恐ろしげなことが書かれていたので、よほど怒っていると思っていた。
しかし、怒りの感情はまったくなかったようだ。
「じゃあ、ユング心理学って何?」
と私。
「ああ、あれはね、ユング先生っていうのはね。それまでと違って患者を医者である自分の一段下において見るのではなく、対等に話し合って治療した人なんだ。それが対症療法。だから、そういうふうに、僕達も対等に話し合おうよっていう意味なの」
分かんねえよ。
それだけメールに書かれても。
そういうわけで、書き方がおかしかっただけで、彼は彼なりにまっすぐに私を見ようとしていたわけです。
「でも、でも、彩乃木先生が結構きついこと書いてたじゃん」
と、私。
「あはは。その後、ちゃんとフォロー入れてたじゃない?いい人だなあ、って思ったよ」
フォロー?入れてたかな?いい人?
「私、あんたがすごい怒ってると思って、ブログにいっぱいひどいこと書いちゃったよ」
その部分はまだ、読んでないらしい。
「きゃはは、そうなんだあ。じゃあ、何?俺ってASCの人に「だめんずうおーかー」に出てきそうなだめ男だと思われているの? なんかユングとか言って知識ひけらかしたりとかさあ。おもしろおい」
なぜ、喜ぶ?
ちなみに「だめんずうおーかー」とは暴力や借金を繰り返す駄目な男とばかりつきあってしまう女の人のことがギャグタッチで描かれた漫画のこと。
ちなみに、彼の将来についての考え方は、個人的な問題になるのでここで書くのは差し控えます。
掃除に関して。
「俺も昔はなかなか自分の部屋の掃除できなかったからさあ、俺の公演が終わったら一緒にローズ(私のあだ名)の部屋掃除しようね、と思って。そのことが言いたかったの」
なんだよ。「千秋気取り」とか書いて怒っているのかと思ったよ。
「それとね、ローズに言いたかったのはね、だめでもいいんだよ、ってこと。
「だめっこ動物」って漫画見せたでしょ。だからね、無理しなくていいんだよ」
「だめっこ動物」とは、その動物本来の役割を果たせない駄目な動物たち(不良のうさぎ、弱弱しい狼等)が繰り広げる4コマギャグ漫画だ。
ちなみに、「あえて言わなかったこと」というのは、私もとっくに知っていた前の養成所の情報のことだった。
いろいろ気を使ってくれていたようだが、今の私には影響はない。
なんだか、狐につままれたよう。
なぜ、こんな行き違いが起こったのだろう。
メールが来た後、私が彼に電話をしても出なかった。(電話が嫌いらしい)
彼が本番前で、しかも夜中に働いているということもあり、私と会う(話す)機会が5日くらいまったくなかった。
2、3日メールすら来なくなった。(やはり、忙しかったようだ)
こんなことが重なって、私は勝手に不安を増大させ、ブログにブルーなことを書き、いろいろな人に相談して巻き込み、勝手に問題を大きくしていたようだ。
それと、自分なら「ASCに入って将来どうするつもりなのか分からない」とか言われたら、激怒するのではないかと、知らず知らず自分に置き換えて考えていたのかもしれない。
やはり、人間、メールだけでは伝わらない。
伝わらないどころか誤解ばかり起きる。
ちゃんと会って話さないと。
しかし、馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい。
私は何一人で心配して、電気消せの妖怪まで見て、疲労していたのだろう。
まったく。
なにもかも自分の心の中で作り出していた幻影と戦っていただけだったのだ。
私は暴風雨の中にいたが、彼はいつも心地の良いそよ風の中で鼻歌さえ歌っていたのだ。
ちなみに彼は人に何を言われようとあまり気にしないらしい。
「あの後もブログで彩乃木さん、君のこと随分いろいろ言ってるよ」
と言っても、
「そうなんだあ。一度、お会いしたいなあ」
と、笑顔で言っていた。
何か納得いかないものを感じるが、とりあえずこの件はこれで終わり?!
しかし、なんだろう、この物足りなさは。
何かものすごく大事なことを忘れているような気がする。
なんだろう?
何か言わなければならないことをまったく言っていないような・・・
あれ?あれ?あれ?
考えなければいけないことがあったような・・・
しかし、この件で巻き込んだ方々、本当に申し訳ございませんでした。
全て私の勘違いでございました。
普通に彼と会って話していれば、こんなことは起こらなかったのです。
特に、彩乃木先生。
いろいろ心配かけてすみません。
彼を愛する気持ちについても、時間をかけて、しっかりともう少し「彼と向き合いながら」ゆっくり考えていきたいと思う。
後、メールのやりとりは連絡事項以外は控えようと思う。