たよるとはたよらるるとは芒かな
先日、文学座の「風のつめたき櫻かな〜久保田万太郎作品集より〜」(平田オリザ作・戌井市郎演出)を観る。
紀伊国屋サザンシアターにて。
近未来、東京に大地震が起こる。
なんとか全壊をまぬがれた喫茶店「ライン」に、様々な人々が集まる。
熟年のベテラン俳優が大勢出演しているなんとも贅沢な舞台だった。
それぞれ、震災の被害に遭い大変な思いをしているもののたくましく明るく生きる人々。
喫茶店でコーヒーを飲む。
隣人のなんでもないような話を聞き、相槌を打つ。
ただ、そこにいる。
こんな演技がどれほど難しいことか・・・
普段やっていることが舞台に立つとまったくできなくなる。
無論、この舞台の演技は「ああ、さすがだなあ」と感じるものだった。
常連ばかり集まる喫茶店のよくあるような光景。
しかし、それぞれが、つい先日まで人の生死を目の当たりにしてきた人々、そして今も戦い続けている人々だということを一瞬たりとも忘れさせてはくれない。
なんでもない一言一言が実に重い。
時折、劇中に久保田万太郎さんの俳句が挿入される。
特に「たよるとはたよらるるとは芒(ススキ)かな」と言う句が印象的だった。
支えあわねば立っていられない植物の芒。
支えあって生きていこうとする人々の姿と重なった。