新しい世界へ・・・
私は、結構目が悪い。
今まで必要な時だけ眼鏡をかけていた。
しかし、わけあってコンタクトレンズを使用することにした。
眼科の先生に「コンタクトレンズと目の相性が素晴らしい」と言われる。
ううん。微妙・・・
もともと目がいいのが1番いいに決まってるじゃん。
子供の頃は、太っていたし、虫歯も多く顔も運動神経もそんなによくなかったが、視力だけが良かった。
だから親に「お前は目だけがいいのだから大切にしろ」と言われた。
ところが、本が大好きで寝床でも読んでいたおかげで、あっという間に視力が落ちた。
視力が落ちたことを認めるのが、何の取り柄もない人間であることを認めるように思えて嫌だった。
だから、眼鏡もなかなか作らなかった。
高校生の時、音楽の先生にある本を借りた。
現本がないのでうろ覚えだが、確かこんな話だった。
ある男が、盲目の娘と恋仲になる。
しかし、盲目の娘が手術をして見えるようになった途端、彼女は自殺をする。
遺書には、自分が今まで心に思い描いて恋焦がれていた人は男ではなく男の息子だった、
そのことが見えるようになって分かった、と書かれていた。
真実に絶望して彼女は自殺したのだ。
そういえば、なくなった祖母も眼鏡をかけた瞬間自分の顔の染みやらしわやらがはっきりと分かって嫌だったと言っていた。
見えるようになると絶望することの方が多いのだろうか・・・
いやいや、きっとその分もっと、素晴らしい世界が待ち受けているのだ。
より、くっきりはっきりした世界へ、旅立つのだ。