「アンダンテ」幸子のその後

 「私のちいさなピアニスト」を観る。韓国映画
 この映画はどうしても、「アンダンテ」の上演前に観たかった。
 ピアノの女先生が主人公。
 留学さえすれば(家庭の事情でかなわなかったが)、必ず自分はピアニストとして成功していたと信じている。
 そんな時、家庭環境には恵まれていないが、ピアノの才能あふれる少年が彼女の前に姿を現す。
 彼を優秀なピアニストに育てることで自分のコンプレックスを解消しようとする。
 しかし、少年はなかなか思うように言うことを聞いてくれない。

 
 「アンダンテ」の主人公の一人、幸子はピアニストを目指している。
 しかし、いろいろな意味で現実は厳しい。


 幸子が夢と現実のギャップをどう埋めるのか、その答えのひとつがこの映画に示されているのではないかと期待しました。
 しかし、映画の上演が8月後半の大変忙しい時期だったため、結局上演が終わってからの鑑賞となりました。


 この映画の主人公の先生、なかなか冒険だなと感じさせるくらい嫌な性格だ。
 自分の名声のために少年の才能を利用して、生徒を増やす。
 少年は母のように彼女を慕っているのに、少年がコンクールで失敗したとたん彼を捨てる。
 なかなか感情移入できないで困った。
 ストーリー展開はあまりにも素直すぎ。
 多分こうなるだろうな、という予想をまったく裏切らない。
 安心して観られるという利点もあるが。
 結局、主人公がいつピアニストになりたいという夢となれない現実とどうやって折り合いをつけたのかいまひとつ分からない。
 才能ある少年との心の交流がこの映画の主眼だったので、それも仕方ないことか。
 映画の中で出てくる本物のピアニスト、ジュリアス・ジョンオン・キムさんのピアノは必聴です。
 うますぎてちょっと映画から浮いてました。
 
 
 ピアノという楽器は努力を裏切らない楽器です。
 練習すれば、その分必ずうまくなります。
 その代わり、一日さぼると取り戻すのに三日はかかります。
 私も実感としてありました。


 小さい頃はどうしても同じところばかり弾くような単調な練習を強いられるため、大体子供はピアノの練習が嫌いです。
 最近は、いろいろな工夫されたテキストが出ているので必ずしもそうではないかもしれません。
 芸術はなんでもそうかもしれませんが、なかなか仕事にするのは難しいようです。
 私はかつて、音楽教室の受付をやっていましたがそこで漏れ聞いた話。


 結婚式等の伴奏者などもやったことのある先生方は例外なくこんなことを言います。
「弾ける人はほかにもたくさんいるから、自分でなくてもいいような気がする」
「練習時間を多く取られるわりには、そのわりに合わない仕事」
「本当に、バイト程度の仕事」


 先生をやるにもそれで生活を支えるなんて、朝から晩まで毎日生徒を教えていても難しい。
 それこそ、実家か、ある程度収入ある男性と結婚されている方がほとんどでした。
 もちろん、例外はあるでしょうが。
 音楽教室はほとんど女の先生、それぞれ能力差がある中の人間関係もこれまた大変。 
 でも、映画じゃないけどやっぱり生徒がコンクールに出るとなると、やっぱり結果は・・・となりますね。
 どの先生の生徒が賞を取ったとか・・・
 結構、恐ろしい闘いです。


 映画に出てくるような天才の子供はやっぱりいます。
 コンクールなどをみにいくと毎年、大人でもとても弾けないような曲を何曲も軽々と弾く子供が毎年います。
 毎年、毎年・・・
 即興で楽譜を見ずにその場で作曲して、ぺらぺらと弾く子供もたくさんいます。
 そういう子を見ていると本当に嫌になります。
 ああ、自分の練習していることって一体・・・
 それでも、大人になってからも続ける子供はそのうち一割にも満たないのではないでしょうか。
 
 
 ピアノは本当に怖い先生も多く、レッスンは苦しかったけど・・・
 今回、舞台に登場させることができて、それだけでもやってきて良かったなと思いました。
 無理やり毎日練習させてくれた?親に感謝です。  
 こうやって、はじめて私がピアノに感謝できたことも、もしかしたら「アンダンテ」の結末のひとつなのかもしれません。