好き、嫌い、好き、嫌い・・・・・

 少々ブログを書くのをさぼっていたので、書くことが山のようにたまっている。
 ブログを書くのは私にとって至福のひとときだ。
 その私がブログを書く時間もないというのはよほど「時間」ではなく精神的に余裕のない時だ。
 正直、自主公演「アンダンテ」である問題に直面しているがゆえに、余裕のない日が続いた。
 

 まず、その自主公演「アンダンテ」だが、新しくメンバーに黒崎照(あき)さんという青年座の女優さんが加わってくださった。
 長身の笑顔が魅力的な女優さんだ。
 この方の存在が私にとって、今のメンバーにとってどれほど救われていることか。
 つい最近加わってくださったのにも関わらず、もう何年も私たちと一緒にいたかのようになじんでくださっている。
 どんどん新しい意見も出してくださって、本当に助けられてばかりだ。
 期待大だ。


 書いたものが俳優の肉声で語られると、どんどん戯曲の世界が広がって、なんだかすごいものを書いたような気になる。
 しかし、書かれた世界をいかに魅力的に膨らませるかが俳優の仕事である。
 敬愛する劇作家の平田オリザ氏も自分の台本を岸田今日子さんが読んでくださったときは感動した、とおっしゃっていた。
 ある世界的に有名な女優さんはレストランのメニューを読んだだけで、聞いている人を涙に誘うことができるという。
 本当に芝居は一人で作っているのではない。
 書いたものを、広い大きな世界に広げることのできる俳優が演じてさらに魅力的なものにするのだ。
 ぞくぞくするような共同作業を今、行っている。 
 
 まず、芝居の感想を。
 「祈りーテヴィエ一家とその仲間達ー」(双の会公演)を観る。
 これは尊敬するASCの菊地一浩先生が演出、そして、研究生の阪口美由紀姉さんが出演、また、かつて芝居をともに学んだことのある室江麗子さんも出演。
 これはもういろいろな意味で楽しみだった。
 師匠の、仲間の作った芝居を背筋を正して見なければならないと気合を入れてかわいいワンピースで行く。
 菊地先生に「どうしたの?」と言われる。
 思いは伝わらないものである。


 それはともかく、あの超有名ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」を題材にしたこの作品。
 かつて観たことがあるがそれはもうすばらしかった。
 ことに音楽がすばらしい。
 それをストレートプレイでやる、しかも3時間超、というのでちょっと心配していた。
 長いのでは・・・音楽なしだと退屈なのでは・・・
 
 しかし、そんな心配はまったく杞憂だった。
 一部の幕切れですでにすでに滂沱の涙。
 後半にいたってはほとんど泣きっぱなしだった。
 
 とにかく、登場人物は「真っ直ぐ」だ。
 テヴィエの上の三人姉妹はそれぞれ、結婚相手を自分の意思で選ぶがその愛にまったく迷いがない。
 どれほど父親に反対されようと決して揺るがない。
 登場人物たちは貧しくとも、外圧があっても懸命に明るく自分の人生を生きている。
 本当に「真っ直ぐさ」にかなうものは何もないと思う。
 これほど人の心を動かすものはない。
 こんなふうに生きられたらいいと思う。
 

 もちろん、阪口姉さんもすばらしかった。
 後半に少しだけ出てきて作品のテーマを語るというジュディ・デンチがやるような大役、と聞いていたが、みごとにこなされていた。
 しかし、驚いたのはわが戦友室江麗子さんだ。
 今回は5人姉妹の一人という役どころで作品の中で特別なドラマを持って書かれているわけではない。
 だが、この役にみごと息を吹き込んでいきいきと演じているように感じられたのは身内の欲目だろうか。
 なんだか、今までの百倍くらい成長したように感じられた。
  
 
 登場人物が悩み惑う台本を書いて上演しようとしている私は、この作品に大いに感動してしまったことに少々複雑な思いでいる。
 「愛」も「人生」も迷路のよう。
 現実世界大半の人はそうかもしれない。
 「本当にあの人が好きなのだろうか」とか「私は本当にこれがやりたいのだろうか」など悩みながら毎日を過ごしている。
 だからこそ真っ直ぐな「愛している!!!」とビックリマークが100個くらいつくような真っ直ぐな思いを伝える芝居に感動するのだ。
 果たして悩み惑う等身大の日常のような姿を見て、どう受け取られるのか。
 

 ええい、悩んでもしょうがない。
 「伝えたい!!!!」という思いが作り手にビックリマーク100個くらいあれば・・・。
 
  
 まだ、書きたいことはたまっているが今日はここまで。